リンパ球輸注療法とは
 正常人末梢血から分離したリンパ球(白血球)を少数個、ガン患者に輸注することにより、体に本来そなわっている抗ガン免疫能を賦活して、ガンを退縮させる療法です。

リンパ球輸注療法の歴史 
 ガンに対するリンパ球(白血球)輸注の効果は偶然発見されました。
 1950年代に東欧で原子力事故が発生し、フランスから医師マテが招かれ被爆した人たちの治療にあたりました。治療は健康人の骨髄血を輸注する方法でした。このとき、被爆した人たちの中に、白血病を患っている人がおり、骨髄血輸注で劇的に治癒したのが始まりとされています。
 マテは本国に帰ってから、白血病を中心にして骨髄血や末梢白血球の輸注療法を本格的に研究し、この治療法はフランスばかりではなく米国にも広がりました。治療効果においても多くの著効例が報告されています。

当時の医療状況ではあまり発展しませんでした。 

 それには二つの理由が考えられます。
 当時、欧米では新しい抗生物質が次々に発見され、感染症に対して劇的な効果をあげていました。それにならい、ガン細胞に対しても有効な抗生物質、制ガン剤探しが本格化したことが第一にあげられます。
 第二は、欧米人の考え方に関わることですが、体内に侵入または発生した悪い細胞(病原体やガン細胞)は完全に殺して体から一掃する、total cell killという考え方があります。そのために多量の白血球を輸注するようになりました。当然GvH病など副作用を招き、リンパ球療法は研究の主流から外れたのです。

 しかし、抗生物質や化学療法剤でも期待した効果は得られず、その後、体の抗ガン免疫能を考慮したリンパ球輸注療法が再評価され今日に至っています。


現状はどうなっているのでしょうか。

 現在、リンパ球輸注は大きく分けて二つの流れがあります。ひとつ、total cell killの流れを受け継いだ方法で、患者のリンパ球を対外で増殖させ、ガン細胞に対して武装させて体にもどすという方法です。CTL(cytotoxic T-Lymphocyte)LAK(Lymphokine Activated Killer Cell)療法とも呼ばれています。
 もうひとつは、ここで紹介した、従来の化学療法や放射線療法と組み合わせて、少数のリンパ球(白血球)を輸注し、ガン細胞を直接傷害するのではなく、体にそなわっている抗ガン免疫能を賦活して、ガン細胞の増殖を抑えようという方法です。

 同種(他人)リンパ球の輸注によって細胞免疫能が増強される現象は広く研究されており、同種効果(Allogeneic effect)として知られ、数多く報告されています。


その副作用について

 他人のリンパ球の輸注でGvHなど、副作用はないか。
 当療法では輸注するリンパ球(白血球)は10の8乗個です(このうちリンパ球は3×10の7乗個程度)。内科セミナー「輸注管理」(永井書店)によれば、1回のリンパ球輸注でGvH病をおこす量は6×10の9乗個以上とされています。また、日本輸血学会インフォームド・コンセント小委員会の報告(1997年4月)では、2リットルの輸血においてGvH病がおこる確立は2万分の1から10万分の1とされています。当療法で用いる白血球数は全血にして約20ミリリットルですので、GvH病などの副作用はほとんどないと思われます。


どのような患者がリンパ球輸注療法の対象になるのか。

・当療法は・・・ 
1)食べられる  
2)歩ける  
3)血中リンパ球数が一定基準値内にある患者
に有効です。

・肺ガン、肝ガン、大腸ガンなどで化学療法や放射線療法に反応しないガンに効果が期待されます。

 図は転移を伴った腎臓ガンで、従来の方法では根治不能と診断された症例に対するリンパ球輸注の結果です。従来の方法にくらべ、明らかに有意の結果が認められます。

 当療法は化学療法や放射線療法と組み合わせることで、ガン細胞のより強い増殖抑制効果が期待できます。
 ガンの退縮が認められない症例においても、全身状態の改善が得られます。その意味で当療法は生活の質(QOL)を考えた治療法と言えます。

 

*詳しくは関連医療機関、または当研究会事務局に御問合せください。

 


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